判断

施術を受けに来た方からのコメントを聞いて笑ってしまった。妙訳すると、私は子供の頃から体が弱くて、色んな治療を受けて来ました。先生の施術は馬鹿だと出来ませんねとの事である。

そうなのだ。馬鹿だと出来ない。でも、きっと頭が良過ぎても出来ない。なぜなら、人体は複雑系なので理論的に処理するのに向いていない為だ。頭の良い人は整合性を求めて、使えない理論をでっち上げやすい。

医師も診断に苦労する訳である。例えば、頭痛にも種類があるので、とりあえずロキソニンを出しとこうみたいなのは藪医者だろう。

先ほど、右足首が痛いという男性が来ていた。内踝の下が痛むそうな。彼は大酒飲みなので、痛風で足を腫らす事がある。まずそれを考えた。しかし、触ると皮膚はあまり張っていないし、肝臓も柔らかい。次に、アキレス腱を確認した。アキレス腱が縮んで足首の関節の可動に問題が出るケースもある。問題ない。

足首を動かしてみると、つま先を上げる動きと膝が連動しない。怪しい。膝の可動性を触って確かめると、やはりバネがない。彼に話を聞いたら、近頃、スクワットをしているらしい。それで痛めたのだろうか。膝を調整してみる。歩いてもらうと、それで内踝の痛みは取れたそうだ。結果論として、膝が原因だったと言える。足首の痛み一つを取っても、このくらいは多面的に見ないと判断がつかないし、相手によってパターンは変わる。

人体には正解を大前提としたアプローチは向かない。結果論でしか答えは分からない、というのがこの仕事を続けて来ての結論だ。

タイトルとURLをコピーしました