大井町の丸八とんかつ店へ出掛けた。冷酒とハムサラダで、上ロースが出来上がるのを待つ。やっている事は福田和也氏のコスプレである。
氏の何年振りの新刊なのだろうか。『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである: コロナ禍「名店再訪」から保守再起動へ』の発売記念に出掛けたのだ。サンデー毎日で連載されたコロナ禍での飲食店巡りが単行本化された著作である。掲載分の最初と最後で訪れているのが丸八なのだ。
著作内では、コロナ禍で苦境の飲食店がレポートされている。大事な店をみんなで買い支えようというのは如何にも氏らしいし、語り口の相変わらずの福田節に安心した。氏は健康問題を抱えており、連載中も三度倒れて病院に運ばれたそうである。
書かない浅田彰、書き過ぎる福田和也と言われたのも昔の話で、大食漢、大酒飲みの福田氏が、食べられなくなると同時に書けなくなったというのはよく分かる話ではある。
タイトルは保田與重郎の言葉らしいのだが、共感する。自分も街への愛着は飲食店へのそれと不可分だ。自由が丘も東急グループの冴えない再開発で北口周辺が更地になるのだが、主要な駅の全てを武蔵小杉みたいにする気なのかと反発心しかない。花十番の移転が上手く行って良かった。