代田文誌『鍼灸眞髄』沢田流聞書を購入。昭和の名人の弟子で、自身も名人と呼ばれた著者が、師の言行を記録した内容だ。鍼灸の学生に読まれる本で、自分は初めて読む。
以前から耳にしていたが、沢田流が整体に与えた影響は大きい。有名な沢田流合谷は整体でも高血圧の調律点として指定されているし、陽池で子宮を調整する手法もそのままだ。
技法だけではなく健康観も引き継いでいる。例えば、子宮筋腫について、必要があって下血しているのだから、何を慌てる必要があるのだというセンス。
議論として、自分の関心に添っていたのは、理論的背景についての言及だ。元々、陰陽五行の身体観で運用される鍼灸を解剖学ベースで運用しても、チャンポンで中途半端な物になるとの指摘があった。
具体的にも、脳梗塞に対して、延髄で左右が逆になる神経の走行に従って鍼を打つ手法を批判しているのだが、これは自分にも実感がある。脳梗塞後の施術として、頭部を調整する際、麻痺側と同側の頭部に反応が見られる事が多いのだ。神経モデルでは整合性がない。
整体の場合、スポンデロテラピー由来だという神経の反射を用いるので、勉強の初期には戸惑った。西洋と東洋の医学用語が混在して使用されるので、術者の中で整合性がどうなっているのかサッパリ分からなかったのだ。まあ、現在の関心ではまったくなくて、効けば理論はどうでも良いのだが、作中の話運びになんとなくスッキリするものを感じた。
おもしろかったのは、体毛についての指摘だ。皮膚を保護する為に弱った部位の体毛が濃くなるとの内容だった。本当だろうかと自分の体を調べてみたら、そんな気がしなくもない。大本の内臓が回復して、皮膚が強くなると、体毛もまた薄くなるというので、これは実験してみよう。