延髄

この二ヶ月ほど、出張の機会も多かった。

崖から落ちたご高齢の男性を見ていた。コロナがあるので、入院させると面会謝絶である。それで呼んで頂いた次第だ。

30メートルほど滑落して意識不明瞭の状態だというので、初回は久しぶりの鉄火場の仕事に気合を打ちながら出掛けた。ご家族が集まる中、登場する黒づくめの男。世紀末感しかない。

最初に見るのは禁点、次に臍下丹田。臍下丹田を見たら力があるので、一安心した。ここには生命力が現れる。門外漢には理解不能な身体観、死生観だろうが、人数を見て比較検討するとリアルなものになる。

打撲傷だらけで真っ黒なのだが 、延髄だけを調整した。呼吸や拍動のリズムをコントロールしているので、手技的には人体の最重要部位だ。延髄を調整して臍下丹田を見ると、弾力が増している。脈を再び見たら落ち着いていたので、それで帰った。

それにしても、お体がしっかりしているので感心した。正直、今の80、90代の方が70代に比べて、体が丈夫だなという感想がある。公平に言うなら、80、90代になると、丈夫な人しかもう残っていないという事実はあるかもしれないが。

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