知る者は言わず、言う物は知らず

15年以上前に、整体の名人の勉強会に出ていたら、練習で組んでいたプロの男性が、ワタシャあの人の言う事がサッパリ分からんのです、とポツリ。

確かにそうで、毎回、独自用語を抽象的に使うものだから、自分にも何を言っているのか分からなかった。長年の参加者は慣れているのか、質問もしない。愛が光と化合してというほどではないけれど、植芝盛平なのかという言語感覚だった。

凄腕なのは間違いないのだが、やっている事を自分でも分かっていないのか、それとも職人だから隠しているのかな、とも訝しんだ。

ところが、人伝にその名人のエピソードとして、小水が出ないまま寝たきりでいる人に対して、金タライを用意してヤカンから水を垂らす様子を見せていたという話を聞いた。それで小水が出たというので、ウィットがあるなあと驚いて聞いたものである。

当時、名人のところに通っていた人を自分が施術する機会があった。その際、その方から、数回、名人のところに通って、操法が合わなかったねと言われたという話を聞いて、また感じ入った。なかなかそんな事は言えないのだ。

知る者は言わず、言う物は知らずというアフォリズムは、確かにそうなのかもしれない。

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